ikizama素敵な空間で豊かな人生を歩む人

2023.12.09『人を癒し自分も癒される暮らし』

Mrs. AYA KAJITANI

profile

東武宇都宮線おもちゃのまち駅西口にあるハワイアン雑貨店「Hawaiian Style Luana(ルアナ)」を経営。両親が営む美容室の一角に店を構え、3回のリノベーションで徐々に売り場スペースを拡大。店内には、ハワイアンジュエリーを中心に、さまざまなハワイアン雑貨が並ぶ。訪れる人たちは、ショッピングだけではなく、AYAさんとの会話を愉しみ、時には悩み相談も。アメリカ人の夫と小学1年生の息子さん、ご両親と共に、やさしい時間(とき)を紡いでいる。



『“今”を楽しめたことを親に感謝』

さり気なくハワイアンジュエリーをまとったAYAさんが、やさしい笑顔で迎え入れてくれると、そこは、ショップというよりも、不思議と癒しの空間に変わる。南国ムードが漂う店内に置かれたテーブルと椅子に、窓から明るい光が差し込んでいて、思わず腰を下ろし、ショッピングよりAYAさんとの会話に夢中になってしまう。

Luanaは、ハワイ語で「リラックスする・寛ぐ」の意。雰囲気そのままの店名で、AYAさんという人柄を象徴している言葉でもある。

美容室を営む両親の一人娘として、愛情たっぷりに育てられた。家業でもあるので「将来はパーマ屋さん」と、とりあえずは答えていたが、その実、小さい頃から“今”が充実し十分に楽しんでいたので、特に将来への夢や何になりたいかは考えていなかったそうだ。「けっこう、父にいろいろとレールを敷いてもらっていたかも」と振り返る。

お父さんは、美容界では有名なヴィダル・サスーンで学んだが、英語が上手く話せず苦労した経験もあることから、AYAさんを小学生の時から英会話教室に通わせていた。そのため、AYAさんは英語が好きで得意だった。中学でカリフォルニアに1カ月間、高校でノースダコタに1年間留学もしている。



 

留学時の苦労を尋ねると、「あまり考えない性格。すぐ忘れちゃうんですよね」と言いつつ涙ぐむ場面も。言葉少なに語られた様子から、アジア系の人が周りにほとんどいないネイティブな雰囲気と、敬虔なクリスチャンであるホストファミリーの生活スタイルに、馴染むにはかなりの苦労があったと思われる。ましてや、今ほどにWebやSNSがなかったため、ホームシックに陥るのももっともな話し。でも、振り返る時には「行ってよかった!」と。辛さや苦労、大変さも引きずることなく、切り替えてしまえるのが、AYAさんのいいところ。

 

高校卒業後は、アメリカ本土に編入できる短大に進む。アイオワの提携校へ研修に行き、帰路ハワイ島の大学を訪れ、自然が豊かなキャンパスや暖かい気候、すごくのんびりした雰囲気がたいそう気に入り、編入を決めてしまう。その選択が人生の岐路だった。ここから、ハワイとの関わりが始まる。

「今、親になってみて、一人ぼっちで子を留学させるなんて…と思うので、当時の両親の気持ちはどうだったのだろう」と、あらためて、子を手放し、挑戦や冒険をさせてくれた親の懐の広さに感謝する。確かに、一人娘を単身アメリカにやれる親は、当時も今も少ないことだろう。



『ハワイアンジュエリーとの出逢い』

3年間の学生生活を終える頃には、すっかりハワイに魅せられて、地元で働けるプラクティクトレーニングでさらに1年間過ごす。ハワイ島からオワフ島に引っ越して、観光客相手のアパレルショップで働き始めた。その後、偶然知り合ったマキ・コニクソンさんの経営するハワイアンジュエリーショップ“モニ”に転職。「ハワイ好きなら必ず知っている、ハワイ在住の日本人で、世界中を飛び回るカッコイイ女性に“うちに来なよ”と誘ってもらった。今あるのは、あの出逢いがスタートだった」と、その縁を本当に嬉しそうに語る。

「元々ハワイアンジュエリーは気にいっていたけど、仕事をするようになってから、職人さんの想いや仕事ぶり、その歴史なども学ばせてもらえたことはラッキー」と、単なる販売だけではなく、信頼していろいろなことをさせてもらえたことが、今に大きく役立っている。クレームの処理では、誠意をもって対応する姿勢を学び、結果、ビジネスの幅広い経験と知識を得ることができた。「何よりも、観光客の方の大切な思い出のお手伝いをさせてもらえて楽しかった」とやりがいも実感。

ビザがいよいよ切れて、ハワイアンジュエリーへの深まった知識を携えて帰国。

立ち上げて間もない輸入雑貨の会社が、ハワイ関連の商品を取り扱うという時期に、マキさんの紹介で入社。新設のハワイアンジュエリーの分野を任されることになった。「人の縁のお陰」と謙遜。それは間違いないこと。でも、良縁は自ら引き寄せるもの。知識はもちろん、人柄、向き不向きも総合的に信頼されたからこそ。そうして3年間、東京で勤務。仕事づけの日々に、「自分の時間が取れなかったし、都会での生活や環境に馴染めなかった」と、実家に戻ることを決意。



(憧れの女性 マキさんと)

『新たな一歩を踏み出して』

「今までやってきたことを活かし、美容室の一角に、小さくジュエリーを置ければいいなぁ」くらいに考えていたが、父親は美容室をリノベーションして、1/3スペースをショップ用に提供。「だからこそ、中途半端な気持ちではやれない」と覚悟ができたそうだ。「父は、緻密で細かく、自分はずぼらでいきあたりばったり。性格は違えど、父は最大の理解者。思い描いても踏み出していない自分の背中を、ポンと押すような環境をいつも整えてくれる」と、感謝することしきり。とは言え、高いハードルを用意されるので、本人もかなり努力し、成長しなければならない。そこが、甘やかすこととは全く違うところ。

AYAさんを支える人は他にもいる。中でも、ご主人と息子さんは、日々の心の安らぎ的存在。「子育てが嬉しくって。育てるというより一緒に楽しんでいるという感じ。普段の生活も楽しく、自然と仕事のやりがいにつながっている」とのこと。

ご主人は、ハワイに移住した祖父とシアトル在住の日本人の両親を持ち、生まれも育ちもアメリカ。「国籍はアメリカ人。言葉も英語。見た目は日本人、内面アメリカ人」と。ハワイでの友人の結婚式で出逢って、遠距離交際を経て来日、2009年に結婚。

実は、店の名前も二人で考えたそうだ。「自分とは逆で何事も慎重で、頭の回転も早く頼りになり、家族思いで疲れていても週末の家族サービスをしっかりしてくれて優しい。尊敬している」という言葉に、深い愛情が伝わってくる。



開店して16年。3回目の店舗リニューアルを機に、「やっと少し心に余裕ができた。新たな気持ちで、自分らしくいろいろとやってみたい」と意欲的だ。

買い物もネットで事足りる時代に、「ここに来れば、買い物だけではなく、何か情報を得たとか、話して元気になったとか、ゆっくりできて話ししながら良い商品を選べたとか…、そういうプラスの付加価値があったらいいな」と、ここ数年意識して、規模を大きくすることよりも、何ができるのだろうと考えるようになった。



新たな挑戦は、数秘術やパーソナルカラーとオリジナルジュエリーのコラボ企画。

数秘術とは、生年月日や名前の数字をある一定のルールに基づき計算することにより、持って生まれたその人の資質や才能、使命、人生でテーマになることなどを占う。それをアドバイスした上で、運気を上げる御守的アクセサリーを商品化する計画だ。

ヒントは、「ちょっとお話しして、なんか癒された」というお客の声。実は、10年前に資格を取得していて、今までもその知識を活かして、いろいろな相談や悩みを聞いていたのだ。一方で、自らデザインしたオリジナル商品を、ハワイで彫金してもらっていたこともあり、今回、そのコラボレーションを思いつき、本格的に取り組むことにした。

「ただ単にハワイアンジュエリーを作るのではなく、何か意味のある御守になるジュエリーを作りませんか」と、もっとアピールしていきたいと意欲的。



「身に付けるだけで心が華やぎ、気持ちもポジティブになるアイテムにして欲しい。ハワイアンジュエリーには、そういうストーリーと癒しのパワーがある」と。そして、「お客さんに喜んでもらえることで、実は私も嬉しいし、癒される」と謙虚に心境を語る。

最後に、「とにかく、癒しを提供したい。一番大切なのは、自分が輝く、自分が楽しむ、自分がハッピーであること。そのお手伝いがしたい」と、瞳を輝かせながら微笑んでくれた。

Hawaiian Style Luana

 

【Project staff】

企画・編集/ドクターリフォーム Banana works LABO

カメラ/氏家亮子・CLALiS

ライター/菊池京子