古い日本家屋に残る深い庇。
それは単なる“昔のデザイン”ではなく、建てられた当時の太陽の動きを読み取り、暮らしを快適にするための知恵でした。
現代のリノベーションでは、この庇の意味を改めて見つめ直すことで、
機械設備に頼りすぎない、心地よい住まいがよみがえります。
■ 日本家屋の庇は「太陽の角度」から生まれた
日本の伝統的な家づくりでは、
- 夏:太陽高度が高く、強い日差しが差し込む
- 冬:太陽高度が低く、室内の奥まで光が届く
という季節ごとの太陽の角度を前提に、庇の出寸法が決められていました。
夏は日射を遮り、冬は光を取り込む。
まさに自然を味方につけた、パッシブデザインの原点です。
■ リノベで庇を「残す」ことの価値
古民家や築50〜70年の日本家屋のリノベーションでは、
「暗いから」「古いから」と庇を短くしたり、撤去してしまうケースも少なくありません。
しかし、庇を活かすことで——
- ✔ 夏の冷房負荷を軽減
- ✔ 直射日光による床・家具の劣化防止
- ✔ 縁側や土間に生まれる“半屋外”の心地よさ
- ✔ 外観の美しさと歴史の継承
といった、数字には表れにくい豊かさが住まいに残ります。
■ 「太陽の角度」を読み解くリノベーション設計
私たちのリノベーションでは、既存の庇に対して
- 建物の向きと立地
- 周辺環境(隣家・樹木・道路)
- 現代の暮らし方や窓の位置
を踏まえ、当時の設計意図を尊重しながら、今の暮らしに最適化します。
例えば——
- 南面の庇はそのまま活かし、大開口の窓と組み合わせて冬の陽だまりをつくる
- 西日が強い面には、庇+格子や外付けスクリーンで日射をコントロール
- 縁側を室内化しつつ、庇の下に“外でも中でもない”居場所を残す
庇は、過去と現在をつなぐ設計の軸になります。
■ 機械に頼らない、心地よさという選択
高断熱・高気密、全館空調。
もちろん現代の住宅性能は大切です。
しかしそこに、
太陽の角度を読む庇の知恵を掛け合わせることで、
- エネルギーを抑えながら
- 四季の変化を感じ
- 自然とともに暮らす
そんな、日本らしい快適さが生まれます。
■ 庇は「古い」のではなく、「賢い」
深い庇は、時代遅れではありません。
むしろ、これからのサステナブルな住まいづくりにこそ必要な存在です。
当時の大工や住まい手が、
毎日の暮らしの中で感じ取っていた太陽の動き。
その知恵を受け継ぎ、現代の技術で磨き直す——
それが、私たちが目指す日本家屋リノベーションです。
