VOICEお客様の声

出会いと交流の『かけ橋』

体験から生まれた心配りの行き届いたバリアフリー

今回の「家庭訪問」は少々趣向を変えて、最近オープンしたばかりのパン屋さんを訪ねてみました。


『焼きたて屋コパン』は宇都宮高校正門前。あたりにはパンを焼く甘い薫りが漂い、店内は買い物に訪れるお客様がひっきりなしに出入りしています。



 スライド式の引き戸をあけたとたん、「いらっしゃいませ、こんにちわ!」明るくて元気のいい声が響きわたりました。何人ものスタッフが、全員きびきびと働いています。



 声の主、店長の小林律子さんにお話をうかがいます。



「新聞などで『障害者支援』のことが大きく報じられたため、ちょっと特殊なパン屋さんなのかしら…と思われる方が多いようですが、町中にある本当に普通のパン屋なんです」



 にこやかに語る小林さん。パン屋さんを開業したいちばんの理由は、「パンが大好きだったから」だそうで、それだけにシンプルながらこだわりのあるパンを提供しています。



 ご自身はパン職人ではないものの、店を開くにあたって大手パン会社から個人の店のものまで、さまざまなパンを試食しました。



 こだわりのひとつ、米粉パンは限界まで小麦を控えて作っていますが、これは小麦アレルギーに苦しむ人のことが頭にあるからです。



 米粉パンは、餡やおじゃこ、高菜入りなど何種類かが販売されています。はじめのうちこそ具入りの商品が人気でしたが、今では何も入っていないプレーンなものから売れていくのだそうです。そして食パンもたいへん人気があります。パンそのもののおいしさがお客様に伝わったということの証なのでしょう。



 ここで、店舗のもうひとつの大きな特徴、バリアフリーについてうかがってみました。



 小林さんご自身、脳梗塞による後遺症と闘ってきました。病院やリハビリ施設でのさまざまな体験をとおして、障害者と健常者とがお互い、さりげなく暮らしやすいスペースとはどういうところなのかを常に考え、声に出し、行動してきました。



 そこから生まれた、障害者でも安心して気兼ねなく買い物のできるパン屋さんという理想は、ノーマライゼーション研究会を通して旧知だった、ドクターリフォーム・サンセイの山口社長へと委ねられました。



 駐車スペースから入り口まで十分なゆとりがとってあり、入り口はスライド式の引き戸で、自分の意志で楽に開け閉めができます。これが押して引くドアだと、車椅子の人にとっては重労働になってしまうのです。そして店内のトイレは、車椅子からでも便座に移りやすいよう広さや手すりを考慮しました。また、店内でパンを載せるトレイやトングを選ぶのにも、細やかな気配りがされています。



 いちばんすてきだと感じたのは、パンを載せる台がテーブルになり、店内に「人々が交流できる場」ができることです。



 小林さんには、これまでの活動を通じて出会った大勢の仲間たちがいますが、こうした仲間たちと情報交換をしたり、交流を深める場としての機能を店に持たせたいという願いを持っているのだそうです。コパンとはフランス語で仲間や友だちという言葉。店の名前にもそんな思いがこめられているのです。



 コパンは、県内の障害を持つ仲間たちが集まって設立した有限会社です。新聞などの報道から、障害者のための作業所や授産施設のような場所と捉える方が多いのだそうですが、意味合いは少々違うようです。



 代表取締役の金井光一さん自身も、骨形成不全という障害があります。



「障害者には健常者に比べて就労の機会が少ない、もっと仕事の幅を広げれば、障害に応じた就労の機会を増やすことができるのではないか、と考えたことが起業のきっかけになりました。パンの製造販売以外にソフトウェアの開発事業などを展開し、市場競争力のあるビジネスで障害者の就労を支援することが、この会社の目的なのです」



 パン屋さんを例にあげれば、製造、接客、経理や配達などさまざまな種類の業務があります。コパンでは、研修生も受け入れていますが、実際の職業体験をとおして自分にあった仕事にめぐりあうことの大切さは、障害者も、健常者も等しく同じなのです。



 とにかく、焼きたて屋コパンには元気と明るさがみちあふれています。