両親の老後をいちばんに考えた親孝行リフォーム
けやき並木と田園風景が美しい鹿沼市の郊外に、築二五〇年という高木良直さんのお宅があります。地域の名主だったという先祖の建てた家は威厳と風格に満ち、これだけの住まいをリフォームするには、施主も施工者も相応の決心と技術が必要だったことでしょう。
キッチンと屋根は二十五年前に修復されています。それ以前は茅葺きだった屋根は銅板葺き。屋根メーカーの営業マンだったお父様がこだわった、一枚葺きという技法です。
八年ほど前、高木さんがあらためてリフォームを思いたち、相談したのはドクターリフォームサンセイ、山口現会長でした。たまたま雑誌で見た、会長の自宅の写真に心惹かれるものがあったからです。
このときは提案や見積りまで進んだものの、昔のままの家を変えたくないと言う両親の強い反対で挫折してしまったそうです。
しかしこの数年修理しなくてはならない箇所が出てきたり、ご両親も高齢になったことで、昔ながらの家の造りが生活に支障をきたすようになってきました。
いくつかの業者を当たるなかで、ドクターリフォームサンセイの丁寧な対応に不安が薄らいでいったこと、何より古民家再生の施工例の写真やビデオをみたご両親が、その完成した姿に納得してくれたことが、業者選択の大きなポイントだったようです。
建坪七十五坪の平屋家屋には広い土間が南北を貫いています。浴室はその向こう側にあり、入浴時は居間から土間に降りなければ浴室に行けませんでした。足の不自由なご両親にとってたいへん不便です。その上、屋内のトイレが老朽化して使用不能になっていたため、屋外のトイレを使用しているのも両親には気の毒でした。
まず、広がった玄関の一部に床を増設し、その床の三分の二ほどを浴室と洗面所にリフォーム。残った土間と以前の浴室、ほとんど使用していなかった農作業用の台所スペースは、十畳の寝室にしました。さらに、ダイニングキッチンと両親の寝室の間の一間は、食料庫とトイレに生まれ変わりました。これで寒い冬でも深夜でも、両親が安心してトイレに行くことができるようになったのです。
そしてダイニングキッチンは対面式にし、家事が効率的に進むよう配慮しています。寒さ対策としては、ダイニングキッチンの全面に床暖房を設置しました。
以前は直接ダイニングキッチンに上がるようになっていた玄関口の土間は、玄関正面の板の間を広げたことで立派な玄関ホールの役を果たしています。居住空間とは引き戸で仕切り、外気を遮断します。
上がり框には上り下りが楽なように低い二段の階段を誂えましたが、見事な桜の一枚板に目を奪われます。これは昔、お父様が切り倒した桜の木なのだそうです。納屋に置いたままになっていたのを偶然大工さんが見つけて、これを使ってみたらどうかと提案したものなのです。
「大工さんがとてもしっかりした方で、あれこれと提案をしてくれたことがずいぶん役だちました。設計者も大工さんも、私の質問や不安には親身になって丁寧に説明してくれたので、リフォームへの不安がだんだん薄らいでいきましたね。私たちは素人ですから、図面を見たり口で説明されても形を頭のなかにイメージすることができないんです。それを踏まえて丁寧に教えてくれたし、不安や不満を口にしやすいムードを作っていただいていたのでこちらも積極的に意見を言えました。面倒なことややり直しにもきちんと対応していただき、完成した家がイメージと一致したので、たいへん満足しています」と、高木さんは語ります。
二五〇年の風格を損なうことなくリフォームされた高木邸には、目立たないこだわりが随所に見られます。
東と南を囲む回廊と新設した廊下、そして脱衣所の床は桧、他の床材も無垢材にこだわりました。江戸時代からの重厚な建具類に合わせて作ったオーダーメイドの建具類は、昔のものの良さを損なわないデザインで、まったく違和感がありません。これはデザインだけでなく色にこだわったからで、建具だけでなく板張りの外壁の塗装にもかなりの手間ひまがかかっているのです。
江戸時代には壬生のお殿様も時折訪れたという由緒ある高木邸。その風格を現代に甦らせた、見事なリフォームです。