熱海市で発生した土砂崩れ被害。自然災害かと思いきや、まさかの人災『盛土処理問題』だったとのこと。報道されている情報によると、土砂崩れを起こした土地の所有者が二転三転し、今回の責任については、その所在を明らかにすることが難しいのではないかとのこと。何とも言えない憤りを感じているのは、私だけではないでしょう。
今回は、この『土』について、リフォーム&リノベーションを手掛けている建築士の目線でblogを書いてみたいと思います。
『あなたの家の土地大丈夫ですか?』
ごく少数ではありますが、私たちへの相談の中に、「ウチの土地、心配なのですが。」という、土地についての不安を訴える方がいます。そんな方には、建築物と土地の関係性についてお話をさせて頂きます。
「以前建物が立つ前は、畑でしたか?」「造成した土地ではないですか?」など、過去に遡りお話を聞いていきます。と同時に、私たち建築士は、東日本大震災直後にこのようなやり取りがとても多かったことを思い返します。
これらの質問で、私たちが何を聞き出したいかというと、『土の落ち着き方』とでもいいますか、その土が硬かったのか、それとも柔らかい時に家を乗せたのか。ということの確認です。一般的な住宅の総重量は約30~40トン。その重さが基礎に分散され土に乗って行きます。当然ですが土が柔らかければ、家は沈もうとして地面に食い込んでいきます。少し沈んだ程度では倒壊もしませんし、壁のヒビ等の被害も出てきません。が、沈み収まらずどんどん建物が地面に食い込んでいけば、順番としてまずクロスに亀裂が入り、床が傾き、基礎が断裂。(ここまでの被害であれば、リフォームでなんとは直せる範囲です。)その後に大きな力が加われば倒壊となりますが、そこまで急に倒壊する例は、建築技術が発達している現代の日本国内では稀なことなで、壁にヒビがあるからといって、あまり心配しすぎないようにしてください。
まずこれから新しく建物を建てる方は、この『土地の落ち着き』について、しっかりと専門の業者から説明を受けましょう。また、お住まいの建物に心配な点がある方は、お近くの建築士に相談してみましょう。費用をかけて直すことをしなくても、その状況をプロに説明してもらうだけで、安心できることもきっとあると思います。
そして、このような機会に、「畑を宅地にした。」「山を削って土を盛った。」など、ご家族やご近所のお年寄りに聞いておきましょう。何か起きてからでは遅いのですから。
最後に話を熱海の土砂崩れ問題に戻しますが、今回の被害の最大の問題はソーラーパネルを設置した業者が積み上げた『盛土』であることは明らかです。しかもそのすぐ下に民家があるにも関わらず、運搬費用の問題で近くに積み上げたことは、とても重大な問題だと思います。一日でも早くこの問題の責任が明確にされること。そして今回の土砂崩れでお亡くなりになった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
一級建築士 山口弘人
店舗リノベーション事例2021