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世代間の生活観のギャップ

古くて良いものは残し、新しくする部分は思い切って改造する。  

家族といえども、それぞれの性格や考え方はさまざまです。ましてや世代が違えば、価値観の隔たりは簡単にうめることはできません。このたびの大木さんの事例は、リフォームがジェネレーションギャップに有効活用したよい例のようです。


 上河内町で兼業農家を営む大木さんは、ご夫婦とご主人のお母様、そして長女・雅子さんの四人暮らし。ご自宅は築百年以上の農家造りの古民家です。しかしその老朽化は、もはや修復不能な深刻なダメージを所々に刻んでいました。


 特に心配だったのはシロアリ被害です。七、八年前に防蟻処理をしましたが、再び発生することを危惧しています。そして北側屋根部分の雨漏りは年々深刻度を増していました。


 ご主人の重寿さんの頭に「リフォーム」という言葉はまったくなかったそうです。男のお子さんがおらず、二人の娘さんはいずれ、他家に嫁いで家を出ていってしまうだろうと考えていたからでした。昔だったらお婿さんをとって家に残るのが当然という考え方でしょうが、大木さんはそんな期待はせず、奥さんと二人で暮らすのに十分な、こぢんまりした家を新築しようと考えていたのです。


 ところが奥様の考えは正反対。広さのある現在の家をリフォームし、さらに、若い人が住みたいと思うような現代的でおしゃれな住まいを実現すれば、姉妹のどちらかが結婚して家に入ってくれるかもしれないという淡い期待を抱いていたのでした。


 自分たちの家と同じような古民家のリフォーム見学ツアーなどを通して、ドクターリフォームサンセイならば自分たちの理想を叶えてくれそうだとリフォームを決意します。


 痛んだ部分の補修、寒さ対策をポイントに、水まわりと収納という女性ならではの視点で打ち合わせが重ねられ、設計図が仕上げられていきました。


 間取りでもっとも大がかりなリフォームは、家の南北を貫く大きな土間を、広いリビングダイニングに改造したことです。中央には大きな掘り炬燵を、入口には玄関ホールを作り、外気を遮断して寒さ対策としました。


 大木家では以前、茅葺き屋根を瓦屋根に直した際に、寒さ対策で縁の下の周りを壁で塞いだそうです。床下の通気が悪くなると湿気もこもるようになって、それからシロアリが発生するようになったのです。そこで今回は、塞いだ縁の下に通気口を設け、床下には断熱材を入れました。


 土間がなくなったことで、生活動線が良くなって家事がしやすくなったと、奥様やお嬢さんには好評です。以前は家の北側のはずれにあったトイレも、キッチン、浴室などと隣り合わせに移し、快適な暮らしを実現。


 家の東側半分の、襖で仕切られた六つの和室は周囲の廊下も含めて大改造しました。十二畳の仏間と八畳の和室以外はフローリングの洋室とし、若い人が使いやすいスペースになっています。また各部屋のフローリングの素材を変えているのも、この家の特徴のひとつ。一種類で統一するケースがほとんどですが、このアイディアはお嬢さんによるもの。栗や桜、竹などの無垢材を、その部屋の用途や内装のイメージで選んだのだそうです。進行会議には必ず参加してさまざまな意見を出したというお嬢さん。こんな家なら将来もずっと住みたいと思えるのではないでしょうか。


 そして奥様は、収納にかなり心を砕いたようです。家の各所に新設された収納スペースにお仕着せのものは一つもなく、扉を開けるとそれぞれ個性的な工夫がこらされています。押入では下のものが取り出しやすいよう棚を付けたり、用途に応じて仕切を作ったクローゼットなど、それらは奥様が知恵をひねって考え出したもの。中には二日も三日もかけて思いついたものもあるほどです。


 今回、大木さんは「新しくする部分は新しく、古くても良いものは残す」というモットーでリフォームに挑みました。それが自分の家をゆっくり眺めるきっかけになり、「まるで親を思うように家を思った」とご主人は語ります。おそらく奥様やお嬢さんも同じ気持ちでしょう。母娘がアイディアを出し合って完成した家は、「新旧のマッチングが見事」と工事担当者も感想をもらします。これから大木さんの暮らしがどんなふうに変わっていくのか、とても楽しみです。